【漫画】『BLUE GIANT EXPLORER』第3巻、多様文化のサンフランシスコで挑むダイの音楽は今回も熱い。

少年・青年

石塚真一先生&NUMBER8による熱いジャズ漫画『BLUE GIANT EXPLORER』アメリカ編も早くも第3巻目に突入しました!前回紹介した時はまだ1巻目でしたね。

個人的に連載ものは、完結してからまとめ読みするようにしてるんですが、(じゃないと登場人物が多くて難解なものは新巻が出るたび前の巻を読み返さなきゃ設定を忘れてる。。。。)ブルージャイアントシリーズはコンスタントに新刊が出てくれるのと、シンプルでブレないテーマでジャズの熱量と勢いでガーッと読める作品なので、割とまめにフォローしてます。

ということで、アメリカ西海岸を南下する宮本大(ダイ)の「ブルージャイアント」第3巻の舞台のサンフランシスコ編の感想です。

まずはカバー。あれ、今回のカバーのタイトルフォントはスラブセリフ系のRosewoodで攻めてきましたね。アメリカ西部劇のカウボーイとかワイルドウエストを連想させるフォントファミリーです。

ジャズのフォントといえば、まず最初に頭に浮かぶのがジョン・コルトレーンのBlue Trainでもお馴染みのクラレンドン、こちらもスラブセリフ系。

フォントマニアな方はぜひ”Font In Use”というサイトでブルージャイアントを探してください!数々ある有名アルバムのサンプルの中、ブルージャイアントのサムネが登場していて、BGファンにとっては心ほっこりさせられます。

BlueGiantシリーズのカバーはどれも大好きなんですが、あえてベストを選べと言われたらBlue Giant Supreme 第3巻でしょうか。ベニー・ゴルソンの「The Other Side of Benny Golson」のカバーのオマージュですが、大判ポスターにしたいくらいめちゃかっこいい!

セリフなしの二人の選曲したBGMだけが流れるロードムービーみたいなイントロ

empty road between tall trees

さて、本題の内容。もう冒頭からアメリカらしいビジュアルのツリー型の車用のエアリフレッシュナー、しかもアメリカ国旗のパターン入りから始まります。まさに「It’s so America〜!」(笑:ダイの受け売り)。

Walmartで買い出ししていざ、ポートランドから南下しようという場面。主人公の宮本大(ダイ)が次に向かうのはサンフランシスコ。そこへ再び現れたのは自由奔放でスケートボード愛好家のヒッチハイカー、ジェイソン。二人のロードムービーの始まりです。

17話はダイとジェイソンのセリフ吹き出しなしのまるでMVのよう。車内でのやりとり、フリーウェイを降りてダイが練習場所を探している様子、ダイの練習中傍でスケボーするジェイソンなどが終始一言もなしで描写されています。

車内BGM合戦では、U2、和田アキ子、ボンジョビ、いろんなジャンルの選曲しあって、ジョンコルトレーンで二人は、ようやくお互い納得のフィストバンプ。

サンフランシスコでダイが見たのは多様性、そして人種の壁!?

cars parked beside brown concrete building during night time

新しい地ではいつも何某かのチャレンジな洗礼を受けるダイですが、今回のテーマは古くから根強く、そして今もあり続ける人種の壁。特に昨今アジア人が標的にされるヘイトクライム問題が表面化していますが、人種の壁のようなものは根底にずっとあり続ける問題です。そんな壁はジャズ界にも人種ハイラーキーとして存在する、と主張する中国系ドラマーのアレックス。

そんなアレックスの嘆きを、何言ってやがる、下手くそ、文句言う暇あったら練習して壁をぶっ壊せよ、と挑戦的なダイ。そして彼を次のライブにも参加するように促す。

口では彼の演奏を半ば大袈裟にダメ出ししながら、「どうした、壁をぶち破ってこいよ」と言わんばかりのダイの愛の鞭が見えます。

人の面倒まで見れるようになって、ダイは成長したなあ。彼は見えない壁の中で悶々ともがいているアレックを放っておけないんですね。どんな問題にも真剣に受け止めて立ち向かう、それがダイです。

ジャズの素晴らしさだけじゃない。人生哲学について学べるブルージャイアント

purple cymbals closeup photography

ステレオタイプな人種の位置付けのようなイメージは、ジャズの世界に限らず存在します。例えばショパンピアノコンクールの優勝者はポーランド人であるべきとか、タンゴの大会ではアルゼンチン人のパートナーがいないと優勝狙えないとか、相撲はやっぱり日本人の横綱がいないと締まらないとか。

その文化や芸術の伝統を守ろうとするが故の「こうあるべき」という概念の壁をぶち破ることができるのは、やっぱり自分自身を信じつづけるパワーが鍵なのではとないかと思います。

そしてダイの強さは自分を信じることからきている。毎日ストイックに集中して練習をやり続けているからこそ培われる技量。そうやって得たスキルは裏切らない、ということが自信の裏付けになっている。そんな彼だから、「人種の差なんか関係ない。誰がやってもジャズはジャズであり続ける」と言い切れるんですね。

ブルージャイアントはジャズ漫画でありながら人生の哲学漫画でもあります。ダイを通して、自分の信じることを突き進めばいつか道は見えてくる。だからここぞと思ったら、それに向かって突っ走ろ、という人生観。

一方で、1ー2巻に登場したエディのような潔く諦める人生もあるし、クラブの専任ピアニストであるエディの父のような静かで単調で、でも毎日継続し続ける人生もある。

どんな生き方を選ぶかは自分次第だし、自分のタイミングでやめたかったらやめてもいいし、始めたかったら一人からでも始めればいい。

ダイのいう「一人でも始めて、一人でも辞める。」音楽というものは、自由さと自主性に責任を負う人生そのものにも思える。

石塚先生のアメリカの風土とアイデンティティの描写が相変わらず素晴らしい

いつも思うけど、石塚先生はその土地の人々のアイデンティティや独特の風土のような空気感を描くのにものすごくたけてる作家です。

アメリカではMtレーニアでの大きな開放感のある自然、穏やかで余裕のあるポートランドの人たち、雑多で多様なサンフランシスコそれぞれ特徴的です。

人混みに興味深くパーっと集まってパーっと群れが散っていく感じもまさに「アメリカ文化あるある」です。

車のトラブル時、通りすがりの助っ人に対して、ダイが「わざわざ親切に申し訳ないな」と気遣うのに対して、好意を当然の如く受け取るジェイソン。これが感謝やお礼の気持ちを「すみません」と言ってしまいがちな日本人の独特の気遣いの文化なのかな。

そうだよダイ、感謝したいときはその「Thank you very much!!」がベストだぜ。礼儀正しいお辞儀もやっぱり日本人らしくていいぜ。

アジア人だって頑張ってる。天才ジャズピアニスト、ジョーイ・アレキサンダーの出身地、ジャバのジャズが今熱い!?

ブルージャイアントの次の舞台はいよいよ大都会のロサンゼルス。素朴な疑問ですが、LAの後はすぐジャズの本拠地ニューヨークへ飛んじゃうんでしょうか。

ダイの愛車ホンダシビックで走るならいきなり東海岸へ行くより、オースティン、ニューオリンズ、はたまたシカゴあたりのストップオーバーも今後の展開としてアリなんでしょうか。今後の熱い舞台はどこなのか気になります。

ところで、今ジャズが熱い街は一体どこだと思いますか?

NYやカナダのモントリオール、南アフリカのモントリオールなどは多くのジャズクラブやフェスで有名ですが、実はアジアで今躍進しているのが、インドネシアって知ってました?

首都のジャカルタで毎年開催されるジャカルタ – ジャワジャズフェスティバルは、世界の有名ミュージシャンや地元から1400人以上のアーティストが集結する東南アジア最大規模の音楽フェスとなっています。

インドネシアのジャズシーンは元オランダ領という背景からか、音楽家を目指す若者がオランダへ留学して学んだりするシステムがあるようで、音楽の質自体が高く幅広いです。ヨーロピアンジャズに伝統的な民族音楽やロックやポップな要素がフュージョンされた彼ら独自のジャズの形に進化していってます。コンテンポラリーでかつオリエンタルなジャズが興味のある方はぜひチェックしてみてください。

そういえば、2015年の当時11歳でアルバムデビューした天才ピアノ少年ジョーイ・アレキサンダーもインドネシア出身ですね。

あどけない少年の表情とは裏腹に、ジョーイが放つ大人顔負けのテクニックと表現方法で少年時代からベテランミュージシャンとセッションしたり、ジャズフェスで演奏して観客を魅了してきました。世界が注目する若きジャズピアニストの一人です。こちらもマストチェック!

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