2022年1月より菅田将暉さん主演でドラマ化がされる田村由美先生『ミステリと言う勿れ』漫画が読み返すごとに面白い。
『BASARA』や『7SEEDS』などのファンタジーな壮大ドラマで有名な田村由美先生の描く現代を舞台にしたミステリーです。
犯人誰なの?というハラハラなミステリー要素はもちろん、ボリュームのある天然パーマの髪がトレードマークの現役大学生、久能整(くのうととのう)くんがとても個性的。いつの間にか事件や謎に巻き込まれながらも淡々と発する彼の言葉の節々が現代人の心に刺さります。
「僕は常々思ってるんですが。。。」から始まる彼の言葉には
小さな疑問に鋭く気が付き、常識の観念をも覆す発言、時には弱者の心を代弁しているかのようで、痛快です!
今回は作中で特に響いた言葉を紹介します。
久能が殺人事件の任意の取り調べを受けてる最中の、警察官の乙部との会話です。
可愛がって育てた娘から、お父さん臭いとかウザイとか言われてしまっている乙部巡査。
でもそれって生意気に育った娘のせいじゃなくて、生き物としての当然の反応だと久能は言います。
多くの生き物が父と子供が離れて生きている状況だから、遺伝子の弱い子孫を残さないために、父親との子供を作らないよう警戒警報を遺伝子レベルで出しているということです。
娘に邪険にされている父親の悲哀を、それはちゃんと育っている証拠なんだと乙部の育て方を誉める。
無表情に説明しているようで親子のほっこりする、いい話に持っていく久能の話術が素晴らしい。
『ゴミ捨てって家中のゴミを集めるところから始まるんですよ』
個人的にはこれが一番響いたセリフです。
作中の池本巡査は警察官だから忙しいことを理由に家庭を放置しがち。
でも「ゴミ捨て」やってるんですよ!と家事を手伝ってる感を自慢げにアピールする池本巡査に対して、そのゴミ捨てってどこからのこと?と久能が突っ込むシーンです。
これみて、世の中の家事手伝いをした(つもりになっている)夫を持つ妻たちは、その通りだ!と賞賛してることでしょう。
一人暮らしや家事全般をしてる人なら知ってて当たり前ですが、ゴミっていうのはそれが発生するところから始まり、そこから分別して生ごみの水を切って排水溝の掃除して、という一連の作業があります。
それがすでに終わった状態のゴミの袋を家から捨て場に持って行くだけなのに感謝しろと言われても、残り全てを請け負ってる作中の刑事の奥さんがしんどいってことです。
それを親のスネかじってる男子学生が、社会人男性に理論でやり込めるのが痛快でたまりません。
実際家事してる人は、ゴミじたい作りたくないですよね。
スーパーのプラスチックのトレイのまま刺身を出すか、パックから取り出してお皿に移して食卓に並べるかという話題が某番組で出てた時、主婦でもある女性コメンテーターが「皿に移して欲しいといっている意見の旦那は、その皿洗いしろ」的な発言をしてました。
今どきの刺身のトレイは柄が綺麗でそのまま出しても、全然OKと個人的は思ってます。
『真実は人の数だけあるんですよ』
「どれだけ虚言を尽くしても真実は一つなんだからな」という青砥刑事に対して「そんなドラマみたいなセリフをほんとに言う人がいるなんて」と驚く久能。
ミステリーらしい見解ですね。
真実と事実の言葉の定義は違うのだと気付かされます。
事件があったときに、被害者A、加害者Bには自分の立場からくる思い込むによるそれぞれの真実がある。
真実は人の数だけあるけれど、起こった事実は一つだと。
ニュースなどでも事実を言っているようで個人の主観が入り混じったような伝え方をしているものが多くあります。
冤罪事件を起こさないため、真実だけではなく事実を見極めろという久能の意見です。
『メジャーリーガーや監督は時々 試合を休むんですよ』
家庭の問題に対して何かと久能から助言を求めたがる池本巡査。
池本の子育てや家事に「参加する」「手伝う」なんて言葉を使う、子供を奥さんの付属物だと考えている池本にメジャーリーグの中継での例え話を久能が始めます。
メジャーリーガーや監督がなぜ試合を休むのか。それは家族のイベントに参加するため。
彼らにとって奥さんの出産や子供の入学式や卒業式などには立ち会いたいもの。
でも日本のコメンテーターからは「奥さんが怖いんでしょうね」と言われてしまう。
ここに自発的に家族イベントに参加したがる人と、強制的だと感じる側の違いが見えます。
出産や育児を経て変化する妻に対して、問題なのは一緒に変わっていない旦那であると諭す久能。
したこともしなかったことも いずれ自分に還ってくるというのは家庭内の家族に対してだけではなく、人生全てにおけることですね。
『ここで発生するすべての問題はあなたのせいで起こるんです』
バスのジャックに巻き込まれる久能。
仕掛けた男が、「人質が一人でも逃げたら残り全員皆殺しにする 逃げたらみんなが殺されるのは逃げたそいつの責任だ」という脅しに対しての久能の発言です。
人質をとっていう犯人の常套文句ですね。
当然、心優しい人質の人たちは、犠牲者を出さないよう人質に収まるわけです。
でもここで久能が冷静にしっかり反撃。
逃げたせいで他のみんなが殺されても、それは逃げた人のせいじゃない。
殺しをした本人だけが悪いのだと。
犯人に対して、責任転嫁をするなと久能の恐れ知らずの大胆な言葉に感服。
自分が人質に取られて犯人に消しかけられたら言ってやりたい言葉です。
『「人を殺しちゃいけない」って法はないです』
バスの中で犯人が「なぜ人を殺しちゃいけないのか」と人質たちに当たりながら問うシーンで久能がポツリ。
「(人殺しは)いけないってことはないんです。ただ罰則はあります。」
えっ、そうなんだ(自身の声)
「秩序ある平和で安定した社会を作るために便宜上そうなってるだけです。」
でも戦争になったら話は別で、たくさん殺すことが栄誉となる、そんなダブルスタンダードな話だと。
生や死に対しての善悪の論点が問われるなんとも深いテーマです。
殺人がダメならじゃあ、安楽死を選択させたり、堕胎、死刑の行為はどうなんだ、悪意がなければ良いのか?
また、作中でも触れているように戦争のような大義名分があれば良いのか?
時代や時の経緯で生死の価値観がなんともうつろい安いものなのか、ということに気付かされます。
人が集団で生活する中で生み出された現代の社会の秩序に生きる自分はラッキーでした。
まとめ
久能整語録いかがでしたか。
名言ありすぎて、1巻だけしか紹介できませんでした。他の巻もまたの機会に紹介できればと思います。
抜粋して取り上げてますが、一つ一つを深堀すると読むたびに考えさせられるものがあり、久能ワードにハマります。
それにしても、この黙々お喋りする個性的キャラ久能整(くのうととのう)くんのビジュアルは俳優の渡部豪太さんにそっくりです。
ボワっとボリュームのある天然パーマのブロッコリー頭でちょっと垂れ目な目の形も的なつぐんだ口角の上がり具合も。
菅田将暉さんによる主演のドラマが、自分の脳内植え付けられてしまった「久能=渡辺豪太」という公式をどのように掻き回してくれるのか期待大です。