『ストップ!!ひばりくん!』て漫画ご存知ですか?
江口寿史先生の描く作中のヒロイン、ひばりくんが小悪魔的にめちゃくちゃ可愛らしく、こんな子実際にいないかなーって思わせるほど。まあ、ヒロインていうか、ひばりくんは女装趣味の男の子なのですけどね。キュートなひばりくんとは対照的に、内容はドタバタなギャグで、最後までドタバタな終わり方をした作品です。
ひばりくんの誕生から早40年。ひばりくんの可愛さは劣化することなく今見てもキュートさ健在です。
漫画家やイラストレーターとして活躍する江口寿史先生の描く女の子が時代を超えて普遍な可愛さを放つ理由を考えてみました。
江口先生の描く女性は、決して完璧なスーパー美女ってわけではありません。
バービー人形のような脚長の8頭身のモデル体型でもなく、萌えキャラのようなデフォルメされた細いウエストでもなく、特別巨乳なわけでもない。
どちらかというと、アジア人女性に見られる平均的骨格と肉付きのリアルな女の子のベースになっています。江口先生の描く女の子とたちは、手の届かないファンタジーな孤高さをもった女性ではなく、日常生活にいそうな距離感をもってます。
ちょっぴりむちっとした腿や、O脚ぎみの姿勢、クラスとか会社とかバイト先とかにいそうな可愛い子。
生活の断片を切り取ったような一シーンから、抜け出てきたリアルで日常的な女の子たち。
経った1枚の静止画のイラストからは、セリフはないし、動くわけでもない。でも、不思議と彼女たちの性格とか世界観とか空気感が伝わってきます。
ディテールなのにシンプル。緻密な引き算が生み出す江口先生の空気感。
女性の体型が完璧すぎなくてリアル、でも江口先生の女性は独特なポップ感があります。
これはリアルさの中に計画的に端折られた漫画的手法があるからではないでしょうか。
江口先生の描く女性は、体型がリアルで骨格や肉の着き具合も程よく感じられるんですが、腕や顔などの肌の表面はつるんとしてて、膝の裏の窪みとか肋骨の線以外はさらっとしてるんですね。 でも目や唇はしっかりディテールを残している。 シャツやジーンズの生地のシワのより具合なども割としっかり書き込んでて、細いウエストと小ぶりで形の良い胸のラインとかパチンとしまったヒップラインが生地を通して感じられます。
細かくこだわる部位とシンプルに省略する部位のバランスが絶妙です。 江口先生の、抜群な引き算の匙加減がポップさを生み出しています。
線は閉じる、塗り絵がしやすい江口テクニック線画
もう一つ江口先生のイラストって塗り絵がしやすいんですよね。
スケッチのように飛び出した無駄線がほぼないんです。意図的に狙っている跳ね線は別として。ソフトで流れるようなヘアスタイルも毛先はしっかりわくで閉じられてて、パスがつながってるので綺麗に中の色塗りがしやすいイラストなんです。
服や髪の毛に動きがあるので一見フリーなストロークに見えますが、実はペンをしっかり終了させて描く完璧主義なスタイル。
そのしっかり閉じたペンのエンディングが背景や画面から抜け出てたような、ポップな2次元な感覚を覚えさせるんです。
可愛らしさとか美の観点って結構時代に左右されますよね。
例えば眉毛が時代によって太眉がトレンドだったり、その逆もあったり。髪型も流行り廃りが激しいパーツです。
でもそんなトレンドに関わらず、普遍的な可愛らしさを江口先生が描けるのは、女性に対する観察眼の鋭さにあると思います。
おそらく江口先生自身がものすごく女の子を観察しててどういう仕草やパーツがより女性を魅力に見せれるかを研究し尽くしているのではないでしょうか。
例えば、上の画集『step』のカバー、完璧な左右対称じゃないんですよね。瞳の虹彩の向きがなんとなくよっていて彼女間近なものをじっとみてるよねって推察できるんです。
口角が上がったプリッとした唇とか、お口に入っちゃいそうなツンと跳ねた左側の髪の毛先とか、完璧じゃないスキのある魅力的な彼女が、じいーっと自分をみてるようなそんなリアルな気分になります。
数十年後もきっと可愛いひばりくんへ
40年の時を経て、江口先生の絵柄はその時代時代でやはり微妙な変化を遂げています。
割と長めだったおでこから上の頭部は丸くなり、手足の肉付きがよくなり、鼻の穴を女の子に描くようになってからはよりリアル感がましてます。
そんな細部まで気を遣って、愛情を込めて誕生させた一人一人の女の子が可愛いのは当然なわけで、渾身の熱量が魅力と反映してると思うのです。
その可愛らしさはきっと数十年経った後でもきっと変わらないのでしょう。
いつまでも可愛い女の子を描き続けてくださいね、江口先生。