不況で失業したオーケストラメンバーたちが謎多きジジイ指揮者、天道の元に再結集。ぱっと見、その辺にいるような下品なエロジジイの天道のペースに、いつも間にか周りの団員たちが乗せられ、それぞれの思いを胸に公演に向けて一つの音を奏でているという音楽ストーリー。
幼少期よりピアノを習っていたという、さそう先生の音楽クラシックの知識やトリビア情報など、オーケストラ団員にしかわからない「あるある」エピソードが序じつに散りばめられています。ユーモアの中に本格的人間ドラマの根っこがあります。
天道のパワフルキャラとそれを取り巻くそれぞれの団員たちの事情が切な
見所は、やはり天道の個性的キャラ。一見ふざけたジジイが無名であるのに、ものすごい才能を隠し持った名指揮者という設定が面白いです。
それぞれ色々な事情や経験を背負って生きている半ばバラバラな個性の寄せあつまりの団員たち。そんな団員たちをまとめて行くのが、クラスの委員長的存在のコンサートマスター。
そして最高の音を導く担任教師的ポジションの指揮者。天道が天才的な破天荒キャラなら、コンマスの香坂はいわゆるエリートで節度を持った普通のキャラで、天道とは一見水と油のように見えますが、香坂の天道への音楽家としての畏怖と尊敬に音楽という共通の糸で信頼関係が芽生えてきます。
オーケストラの演奏シーンはまるで天道が神がかったような圧倒感で神の唸りさえ聞こえそう
オーケストラの演奏シーンは見応え十分です。天道がタクトを持たせると激変。そのタクトの棒の先から感じられる緊張感、「おおーん」というパワフルなうねりの音は神の唸りさえ聞こえそうな圧倒感です。指揮棒を振る天道には、得体の知れない神がかったものがあります。
まるで天上から光がおりてくるよう。オケメンバーみんなの気持ちが天道の指揮棒の先一点に集結していく。天堂の振る棒からはオケがいない時でさえも、音楽が聞こえてくるような錯覚さえします。
天変地異の渦潮だったり、穏やかな田園風景だったりオケの奏でる音の壮大な描写が画面から飛び出してきます。
音楽に捧げる天道の真意は、実は漫画の最初の1ページ目にすでにヒントがある
いい加減で勝手なジジィに見える天道ですが、実は団員たちの些細な音の変化を見ていて、そういう才能がカリスマの指揮者の器なのか、と納得させられます。
それぞれの背負う生い立ちや苦労も、音楽の前では皆平等に真剣で自由。団員たちのエピソードも魅力的で、もう失意の団員にも天道は必要な手助けをしてくれます。
天道の過去の噂や経歴に実は、団員から信頼を失い解散寸前のオーケストラ。天道のコンサートの真の目的はなんだったのか、これは最終話にて明らかになります。
そしてその謎時は、実は漫画の最初の1ページ目に集結されてみられます。なるほど、と読み返してみた時感心させられます。
3巻というコンパクトさだからこそ一気に集中して読み切ることができるボリュームです。最初はユーモラスな展開で始まり、そこから息を吐かせぬ転があり、感動的なラストスパート。読み終えた後は、天道マジックにハマってしまうという修作です。合奏って素晴らしい!