【雑学】キスをすると幸せホルモンの『オキシトシン』が分泌。でもこれって全世界の半数以下の文化圏だけ!?

girl and boy kissing on beach during daytime 文化

Charming woman kissing cute cat in bedroom
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あなたは最近キスしてますか。

マスクが日常化しつつある最近、街角のイチャイチャなカップルのキスを見かける機会も減ってしまいました。

キスをすると、幸せを感じるホルモンが出るそうです。ストレス社会に生きる中、今こそキスをする意義があるのかも!?

でも、キスが愛情表現として認知されてない文化があるって知ってました?

じゃあ、そんな文化にいる人はキスしても幸せホルモンが出ないのでしょうか??そもそも日本にはキスはいつから始まったのか。

今こそ、キスの意味や歴史を少しディープに掘り下げます。

キスの意味と意義

Man in black suit jacket and woman in white dress
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人間社会ではキスの慣習はハグや握手とともに古くから浸透していました。

それは、挨拶だったり、敬愛、尊敬や従属の情を示したり、恋人同士の愛情表現や、性的行為の前戯としてだったり。また宗教的な儀式のものや、結婚の契約を象徴するものとしてのウエディングのキスなどもあります。

幸せホルモン『オキシトシン』によるキスの効能

selective focus photography of woman and boy
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キスをすると脳内から幸福感を引き起こす『オキシトシン』というホルモンが分泌されます。

オキシトシンは別名ラブ・ホルモンとも呼ばれ、愛情の絆によって精神的安心感を導く神経伝達物質です。

親しい人とのキスをしたり、ハグなどのボディコンタクトによって、相手との交流がより親密になり、絆を育むことで、幸せな気分が生成されます。自律神経のバランスを整えられるので、免疫力アップの効果もあるとか。


脳内から分泌される幸福感をもたらすホルモンは他にも、安らぎや癒しを与える『セロトニン』、やる気や運動能力の意欲が上がる『ドーパミン』、心肺機能を高めることによって高揚感が高まる『エンドルフィン』などがあります。

キスの起源は親子の愛から始まった!?

green and blue bird kissing each other
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数万年前の太古の時代からはキスはあったと言われていますが、はっきりとした起源はわかっていません。諸説ありますが、キスは親が咀嚼そしゃくした食べ物を子に口移しする行為が進化したものだと言われています。(※1)

そう、あの母親が乳児に食べ物を与えるとき、一旦母の口の中で噛んで柔らかくした食べ物を我が子に口移しするあれです。

咀嚼(そしゃく)は英語でPremasticationと言います。[pre+mastication]という 「事前に」という意味のPreの接頭辞がついた名詞ですね。滅多に使わないレベルの高い英単語です。使ったらかっこいいかも!って思った方はぜひ覚えてください。

大切な我が子の成長のための親子愛の行為が、現代のキスになったという説です。

キスのもっとも古い文献の一つに、3,500年以上前のヒンドゥー教のベーダ語の記録があります。そこにはキスがお互いの魂を吸い込む行為として記されています。

食べ物を口移しで運び込んでいた行為が、魂を宿るものを与えるという概念に進化していったということでしょうか。


※1 (出典)「Kissing’s Long History: A TimelineVaughn Bryant, Texas A&M University anthropologist

平安時代の日本のキスは生々しい「口吸い」だった

葛飾北斎(1815年)「2人の恋人」Public Domain

西洋式挨拶の「キス」が日本に入ってきたのは明治以降のことです。慎み深さを重んずる慣習のせいか、人前で挨拶のキスをするという文化は日本では未だ定着していません。

とはいえ、愛情、性行為としてのキスは古くは平安時代からあったようです。

「キス」という言葉が知れるようになったのは明治以降でそ以前は「くちづけ」「接吻」そして、もっと古くは「口吸い」と呼ばれていました。

口吸い 平安時代〜

898年の平安時代の文献、紀長谷雄による日本紀略(にほんきりゃく)』には酔った男が遊女に対して胸元を触りながら「口をう」という行為がされていた表現があります。

『土佐日記』には「ただ押鮎の口をのみぞ吸ふ。この吸ふ人々の口を、押鮎もし思ふやうあらむや。」という一節があり「口を吸う」という行為が表現されています。

しかし当時の口吸いは、言葉とおり舌同士の接触にフォーカスされているようで、生々しい性欲行為のようです。

江戸時代に流行した性風俗画、性描写が描かれている春画にも口吸いをしている姿が描かれています。

接吻 室町時代〜

「接吻」はキリスト教とともに室町時代の末期に祝福の礼として伝えられました。

「接吻」という文字はもともと中国の漢語からきているらしく、江戸時代後期に編纂されたへンドリック・ドゥーフによる『ドゥーフ・ハルマ』という蘭和辞典では、キスを意味する蘭語Kusの訳語として「接吻」という語が用いられています。

唇が触れる「接吻」を用いることで「口吸い」の淫らで肉欲的な印象をさけ、キリスト文化の「聖なる挨拶」というイメージを定着させたい意図があったようです。

くちづけ 明治〜

「くちづけ」は恋人同士の熱い恋愛の象徴として明治末の詩歌や小説でも用いられました。

「口付け」は口癖、言い慣らすこと、という意味合いもあります。


※1 (出典)「接吻の日本文化史2001 待兼山論叢. 文学篇掲載、西澤りょう (著)

インドや中東は公の場のキスはタブー

Muscat, Oman
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西洋の文化では日本と違い公共の場での愛情表現がとてもオープンなイメージがありますが、インドや中東など、公共の場でのキスがタブーとされている国もあります。

ドバイでは海外からの旅行者が公共の場でキスしたことによって逮捕された例もあります。アラブではキスはおろか、異性に触れる行為ですら犯罪に当たることがあります。

インドの刑法では公衆の場での愛情表現、「Public displays of affection (PDA) 」は罪にあたり、3ヶ月の懲役や罰金を課せられるとしています。

とはいえ、これはあくまで人前でのことで、プライベートになると若者の意識も寛容なようです。

25歳以下を対象としたインドの若者の調査では61%は婚前の性交渉はOKという意見のある一方で、自分の結婚相手は未経験者であるのを望むものが63%という数字も出ています

なんだかダブルスタンダードですが、「自分は女と遊びたいけど、彼女にするならは遊んでいない子が良い」という男性が求める女性像に似ている気がします。


※1 (出典)「HT-MaRS Youth Survey2013 Zehra Kazmi @hindustantimes.com

多様性すぎる国の挨拶のキス

man kissing woman in grass area

挨拶のキスの作法は国や地域で色々なバリエーションがあります。多国籍の人と交流するにあたり、頭がごっつんとぶつかってしまうようなことがないように気をつけましょう。

あくまで地域差、個人差はありますが、各国の違いはこちら。

キスを1回

アルゼンチン、コロンビア、チリ、ペルー

キスをそれぞれの頬に2回

イタリア、スペイン、ギリシャ、ハンガリー、ルーマニア、クロアチア、ブラジル

キスを右、左、右の頬に2回

オランダ、スイス、ベルギー、エジプト、ロシア(ハグをしながら)

フランスではla biseと呼ばれるキス。交互の頬に2回がスタンダードですが、フランスは北部では4回、一部の南部や南東部では3回(左頬から始まる)、と地域によってバラバラです。

そして、キスは大体がエア・キスで、実際に唇を触れることはまずありません。

私の知ってるフランス人は「よく勘違いされるけど、唇は押し付けないの。キスの音をさせるだけ。」とフレンチの挨拶を主張していました。キスしてるように見せて実は頬しか触れ合っていない、フェイクなキスです。

たまにラテン系の人でブチューと唇を頬に押し付ける場合がありますが、それは特殊なケースか、なんらかの下心があると疑って良いでしょう。

カタールやサウジアラビア、オマーンでは男性同士の鼻をタッチするノーズタッチがあります。

またエスキモーキスとして知られるイヌイットの人たちは鼻と唇をほおやおでこに押し当てて、お互いの匂いを嗅ぎ合うというものもあります。

イギリスやアメリカ、握手がスタンダード。ドイツも握手ですが、「がっし」と擬音が入りそうな堅い握手です。握力使いそう。タイやインドは手のひらを合わせるなど、アジア圏はコンタクトがない地域が多いです。

キスが恋人同士の愛情表現とは限らない

恋愛の象徴であるキスは人間としての普遍的な行為と思ってませんか。

ウィリアム・ヤンコウィアック教授らのネバダ大学の調査によると、キスが恋愛感情の行為と認識しているのは世界中の168の文化圏のうち46%と半数以下しかないそうです。(※1)

半数以上はキスの文化がなく、キスを気持ち悪い不衛生なものとして受け止めいる文化圏もあります

ここで浮上する疑問ですが、キスを気持ち悪がる風習の人たちの間では、例えキスとしても幸せを感じるオキシトシンは分泌されないということなのでしょうか。


※1 (出典)「Is the Romantic–Sexual Kiss a Near Human Universal?, AMERICAN ANTHROPOLOGIST, Vol. 117, No. 3, pp. 535–539 著者:William R. Jankowiak, Shelly L. Volsche, and Justin R. Garcia, Published 2015 by the American Anthropological Association

人間以外の動物だってキスをする

brown seal on green grass during daytime

キスは人間が本能的に創造した他人への表現方法ですが、人間以外の動物もキス、またはキスの類のような行動をとることが知られています。例えば、犬が鼻を擦り寄せあったり、ゾウが長い鼻を絡めあったりとか。

「ボノボ」という類人猿をご存じでしょうか。

別名ピグミーチンパンジーともいうボノボの性行動は人間のそれに近いことで知られています

舌同士を這わせるキスなど、ボノボの約8割の性行動は快楽のための行為であると言われているので、人間に極めて近い性行動だといえます。

ボノボ―地球上で、一番ヒトに近いサル (Soenshaグリーンブックス), 江口 絵理 (著)

唇同士が重なった動物のキスシーンを見ると、たまたま偶然が産んだショットなのかもしれませんが、なんともほっこりさせられます。

yellow and white parakeet kissing outdoor
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