My Beautiful Laundrette Movie Cover
時代を超越して、美しいオーラを持った素敵な俳優っていますよね。時のトレンドに左右されない存在感やパワー、人間性や表情や身のこなし全てが交わって、いつ見ても魅力的な美しさを放っている人たち。
往年の名俳優の追悼で過去の作品を観ると、この俳優さんて若かりし頃こんなに美しく輝いてたんだ。なんて驚いたりします。
1985年の映画「マイ·ビューティフル·ランドレット」でパンク青年ジョニーを演じるダニエル·デイ=ルイスはまさに光り輝く原石のようで、その美しさから目が離せません。多国籍文化やマイノリティーのテーマをコミカルなタッチで描かれた映画と彼の魅力について語っていきます。
落書きだらけの掃き溜めのコイン·ランドリーをピカピカの「ビューティフル·ランドレット」へ

「マイ·ビューティフル·ランドレット」( 原題:My Beautiful Laundrette )は1985年のスティーヴン·フリアーズ監督によるイギリス映画です。
公開10年後の1995年に日本でリバイバル上映されたので認知のある方もいるのでは。
映画の舞台は80年代のサッチャー政権下のサウス・ロンドン、ワンズワースエリア。ロンドンに住むパキスタン系の移民青年オマールが実業家の叔父からコインランドリーの経営を任されます。
でもこのランドリー、壁は落書きだらけだし、洗濯機は泡吹いて壊れてるし、客はスニーカーをドライヤーに入れたりマナーがなってないし、備え付けの公衆電話(スマホなき80年代)で大声で長話してる迷惑な客がいたり、近所の溜まり場と化してる状態。
オマールは困り果てているところ、偶然再開した幼馴染のジョニーに、一緒にコインランドリーを営まないかと持ちかけ、掃き溜め状態の施設のリノベーションに二人で乗り出します。知り合いパキスタン人サリムが運んでるやばい薬物を内緒で現金にして、改装資金を調達したり。ジョニーの仲間である白人ギャングたちからは、なんで俺たちの友達ジョニーがパキスタン野郎の下で働いてるんだ、とバッシングされながらも、ついに美しく生まれ変わったランドリー店「POWDERS」が完成。しかし最高の日になるはずだった改装記念のオープニングにはいろんな事件が待ち受けて。。。
全般的にコミカルなテイストなんですが、作品内ではパキスタン移民と、ダニエル·デイ=ルイス演じるジョニーが属する有色人種を差別する白人ギャングたちとの確執、もっと広くいうと富裕移民層と低所得者白人層が混在するワンズワースが背景になって絡んできます。
オマールは、ジョニーとの絆を育みながらも、白人ギャングたちから「wog boy」(白人じゃない人種の男性を欺けていう言葉)と罵られたり、過去にファシストであったジョニーへの懐疑、ジョニーと経営管理の相違で言い合いになる、などの障害にぶつかります。
パキスタン移民のコミュニティの格差社会も浮き彫りになっています。
オマールは質素なフラットでアルコール中毒症で体が不自由な父親を介護する二人暮らし。一方、実業家のオマールの叔父ナセルは羽振りがよく、うちでパーティを開きパキスタン富裕層を招き、白人女性の愛人までいる。パーティに来る富裕者の一人サリムは闇業界でドラッグの運び屋をする。自分より低所得な人間を蔑視していて、オマールの顔を足で踏んづけたり、白人ギャングたちに故意に車でぶつかり怪我を負わせたりなどするパキ・コミュニティの中でも鼻持ちならない男です。
また女性たちの苦悩も見られます。
オマールに色目を使うナセルの娘タニアは、自分の夫の愛人に呪いをかけようとカルトに執心する母や、退屈なパーティー、父親の不倫、そんな家族を嫌い外の世界に飛び出したがっています。ランドリー改装オープンの日、父の愛人レイチェルと奇しくも対面してしまうタニアは「男に金銭的に頼るしかないあなたを軽蔑する」と罵るも、「そういうあなたは誰に頼ってるの?」と言われ、結局自分も父の作った暖かな鳥籠の家を抜けれずにいてることを悔やみ、自責の念にかられます。
とはいえ、根本的な社会的な問題が背景にありながらも、過度なドラマ仕立てで涙を煽るような演出はなく、あくまでリアルに、コミカルに、そしてロマンティックに描かれています。
美しく、セクシー、ちょい悪なパンクファッション青年のダニエル·デイ=ルイス
ダニエル·デイ=ルイスの若かりし頃は、こんなにも美しくセクシーだったのか、と20代の輝ける彼の姿を拝むだけでも「マイ·ビューティフル·ランドレット」は見る価値ありです。
カメレオン俳優と知られるダニエル·デイ·ルイスは過去に3回アカデミー賞主演男優賞を受賞した経歴の英国の俳優です。女優はキャサリン·ヘプバーンが過去4回主演女優賞を受賞していますが、2021年現在、男優としての3回受賞はダニエルのみで記録保持者です。
完璧に役に入り込むために、徹底的に研究と訓練を行う完璧主義者のダニエルは、作品によってさまざまなキャラクターや表情を見せてくれます。
彼が注目されたのは「マイ·ビューティフル·ランドレット」と同年に公開された映画「眺めのいい部屋」の両作品で全く違うキャラクターを演じて以来でしょう。その後様々な作品に登場し「存在の耐えられない軽さ」は生きること女性との恋愛に対して軽薄なプレイボーイ、「マイ·レフトフット」では困難な障害者の役を演じ、歴史上人物の伝記映画「リンカーン」では本物そっくりに髪や髭を伸ばした風貌や南部の訛りで演じて、変貌自在の変化を見せてくれるダニエル·デイ·ルイス。
「マイ·ビューティフル·ランドレット」ではまず、ダニエルの骨格の美しさに注目です。
作中ではストリートポップなパンクファッションに身を包んでいて、上半身はTシャツ、フーディー、ジャケットの重ね着に、下半身は細身のジーンズ、そしてトップだけブロンドに染めてるショートヘアにトレードマークのフラットキャップ。金属アクセサリーはミニマルで常に身につけているのはシンプルなペンダントと時計くらい。ペンキ作業中には作業着のジーンズの上から履いているジャンプスーツを腰に巻いて、道具入れがわり使ってるところもさりげなくオシャレ。
ギャング設定なのに、スタイリッシュに着こなしているのは、ダニエルがもともと細身で長身、嫌味すぎない上半身の筋肉のボリュームにすらりとした長い足だからでしょう。とりあえず何を着てもシルエットが良いので様になります。
もともと目鼻立ちが彫刻されたようなストラクチャーの気品のある顔立ちなので、短い髪もフラットキャップも似合います。
作中のジョニーは、住むところがなくて、空き家をフラフラしてるようなライフスタイルなんですが、そこから想像できないほど毎回違う重ね着ファッションが楽しめます。
そしてアスリートのような身のこなしの軽さにも注目です。
洗濯機をひょいと、とび箱のように乗り越えたり、ロープをつかってビルの壁をよじ登って2階の窓へ飛び込んだり、ギャング仲間にふわっと飛び乗ったりする身のこなしの軽さ。
しなやかで美しい骨格の身体が織りなすモーションは見ているだけで惚れ惚れします。
「眺めのいい部屋」のシシル役では、白いスーツに身を包む上流階級の知的でスノッブなジェントルマンとは対照的なキャラクターでした。なのに、どちらもしっかりハマっているところがさすがは役作り完璧主義者の彼ならでは。